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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)2656号 判決 1969年12月19日

控訴人

小島秀海

代理人

三輪長生

ほか一名

被控訴人

日本ファイリング製造株式会社

代理人

山田茂

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一、控訴人は「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人に対して原判決別紙物件目録第二記載の建物を収去して同目録第一記載の土地を明け渡し、昭和四二年八月一日から右明渡ずみにいたるまで一か月一四、五六一円の割合による金員を支払え。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

二、控訴人は、法律上の見解として、次のとおり述べた。

(一)  当事者が土地賃貸契約を更新する場合に、期間を二〇年と定めると借地法五条二項が適用され、期間を定めないと同条一項が適用されるとするならば、用心深く凡帳面に物事を考える賃貸人が不利益を蒙り、ぼんやりとうかつにも、期間を定めなかつた賃貸人の方が却つて有利になるという不都合な結果を生じるから、期間を二〇年と定めた場合も同条第一項が適用され、期間内に建物が朽廃したときは、それによつて借地権は消滅すると解すべきである。

(二)  借地法五条二項は、前項に規定する期間(二〇年)より長い期間を定めた場合にのみ適用がある。したがつて二〇年の期間を定めた場合には、同条二項が適用されるのではなくて、一項が適用されると解すべきである。

以上のほか、当事者双方の主張は、原判決事実摘示記載のとおりである。

理由

一借地法五条一項は、当事者が借地契約を更新する旨の合意をしたが、存続期間を定めなかつた場合および非堅固建物について二〇年に満たざる存続期間を定めた場合および法定更新(借地法四条一項、六条)の場合において、非堅固建物の所有を目的とする借地権の存続期間は二〇年とするが、建物がこの期間満了前に朽廃したときは、これによつて消滅することを規定したものであり、同条二項は、非堅固建物について、借地契約更新のさい、二〇年以上の存続期間を定めた場合は、その期間満了前地上建物が朽廃したと否とを問わず約定期間の満了によつてのみ借地権が消滅する旨を規定したものと解すべきである。

二本件において、控訴人先代はその所有する本件土地を被控訴会社に対し、昭和一三年八月一九日普通建物所有の目的で期間二〇年と定めて賃貸し、右賃貸借は昭和三三年八月一日期間満了によつて終了したが、控訴人と被控訴会社とは、合意のうえ、さらに期間を二〇年として更新した事実は、当事者間に争いがないのであるから、一に記載したとおり、本件土地賃貸借契約は昭和五三年八月一八日まで存続すべきものであつて、それ以前に地上建物が朽廃しても、それによつて借地権が消滅するいわれはないというべきである。(岩野徹 瀬戸正二 土肥原光圀)

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